2017年から放送されているNetflixオリジナルドラマのマンハント。
Netflixオリジナルドラマはどれもクオリティが高く面白いものが多いので、このドラマにも期待して観ましたが、まさにその期待通りの面白さ。
今回はこのマンハントのあらすじと感想や見どころなどについて書いていきます。
目次
あらすじ
凶悪な爆弾犯を追うFBIの捜査に呼ばれたジム・フィッツジェラルド。
彼はプロファイラーとして行動科学の面から捜査を進めていく。
その対象となるのは爆弾犯として世間を騒がせるユナ・ボマー。姿の見えあい相手との戦いが始まる。
彼を追うフィッツジェラルドのプロファイラーとしての捜査とそこにある苦悩、そして逮捕後も続く犯人との戦い。ユナ・ボマーとはどんな人物なのか。
緊迫した雰囲気の中で描かれるNetflixシリーズのヒューマンドラマです。
実話をもとにした作品というのも驚きですね、こんなことが現実にあったのかと驚愕しました。
海外ドラマというと長いというイメージがあるが、マンハントは全8話で構成されているので長編があまり得意でないという方でも見やすい作品となっています。
正直マンハントはめちゃくちゃ面白い!
まず見終わって感じたのめちゃくちゃ面白い!そして8話にしては本当に濃厚なドラマだなということ。
正直海外ドラマ好きとしては8話で終わるのってなんか物足りないという気持ちになってしまうのだが、このドラマはそんなことは無い。短い話数の中に濃厚なストーリーが凝縮されていてもうお腹いっぱいといった感じ。
手紙や文章を分析して犯人の目星を付けるってどんだけ!という気もしたが、案の定その捜査を理解してもらえずどんどん孤独になるフィッツジェラルドが見いてい辛くなる。
そして、それ以上に悲惨なのがユナ・ボマーことカジンスキーの過去。親友に裏切られ信じていた教授にも裏切られマインドコントロールの実験体にまでされて・・・という、犯罪者といえども酷すぎる過去を背負っている。
最後の方はカジンスキーに同情してしまうほどだった。どこかで道を違っていたら、家族を作り幸せな時間を過ごす人生もあったはずなのにと思ってしまうほど。
どんどん孤独になり塞ぎ込むフィッツジェラルドと孤独であるが自らの主張を貫く信念を持つカジンスキーが似ていながらも対照的で見ごたえあり。
特に印象に残った場面は、カジンスキーが知り合いの子供の誕生日に家を訪ねて手作りのピアノをプレゼントしようとするシーン。ガラス越しにピカピカの楽器を貰い喜ぶ子供を見てプレゼントを渡すことなく引き返すカジンスキーの姿は痛々しいほどでした。
しっかりとしたストーリーだけでなく、人間描写も本当によく描かれている点は見事という他ないです。
プロファイリングとは何か
まずプロファイリングというものが何なのかということを理解しておきましょう。
犯罪捜査において犯罪の性質や特徴から行動科学的に分析し、犯人の特徴を推論すること。
犯人がどのような犯行をしてきたか、どのような行動をしてきたかなどを基に分析を行って犯人を推測するということになります。
また、その人物の使う言葉や考え方(概念)などからおおよその年齢・世代を推測するということも行っています。
このプロファイリングはFBIでは1970年代から活用されており、現在も凶悪な事件などの捜査にも導入されています。
マンハントの作中ではプロファイラーである主人公のフィッツジェラルドがユナボマーの思想や手紙に書かれた言葉使いから犯人を探していく姿が描かれています。
正直、このドラマを観るまではプロファイリングというものはよく知らず、そんなことで犯人を推測できるの??という感じでしたが、実際この事件を含む凶悪な事件を解決してきたという事実があり、犯罪捜査を進める上で今や欠かすことのできない手法となっているのでしょう。
プロファイリングの捜査は新鮮
他のドラマや映画を見渡してもここまでプロファイリングに焦点を当てた作品というのはほとんど無いように思います。このマンハントのプロファイリング捜査というのは非常に興味深くて、新鮮なものに感じましたね。
大量の手紙から同じ言い回しを探したり、独特な言葉を見つけたりするのは実際にやるとなるとめちゃくちゃ地味で大変な作業でしょう。
また、プロファイリングの捜査は1995年時点ではそこまで捜査員の中で信頼を得ていないようで、上司にも「たかが言葉だろ」と言われる始末。事件のヒントとなりそうなものを見つけてもゴミ箱に捨てられたり・・・もうフィッツジェラルドが可哀想でたまらない場面もありました。
ただ、観ていてプロファイリングから事件を解決するという新鮮さは他のドラマや映画ではなかなか味わうことは出来ないでしょう。
実在するユナ・ボマーの人物像
ユナ・ボマーことセオドア・カジンスキーは実在する人物です。そんな彼の人物像と犯行の動機を探っていきます。
まず幼少期ですが、めちゃくちゃ頭が良かったみたいです。なんとIQ167で学校でも飛び級で上の学年のクラスに通っていたとか。ただ、そのため年上のクラスメートに馴染めずいじめにもあっていたという可哀想な少年時代を過ごします。
そして16歳であのハーバード大学に進学するという超秀才な道を歩むのですが、その大学である悲惨な出来事に遭遇してしまう。
ハーバード大学の心理学者ヘンリー・マレーの研究に参加していたカジンスキーですが、なんと信頼していたマレーに3年間もの間マインドコントロールの実験体として扱われてしまいます。このことが彼の人生を変えたとも言われていますね。
その後は大学で助教授として働きますが、退職後は人を避けて山小屋でひっそりと暮らすようになったそうです。
そして1978年から17年間に渡って複数の爆弾事件を起こすのです。16件もの爆弾事件を起こすという異常性を見せるカジンスキー。そのうち8件は大学が標的となっており、ここにもカジンスキーがハーバード大学時代に受けていたマインドコントロールの過去が影響しているのではないでしょうか。
そんなカジンスキーは1996年にFBIによって逮捕され現在も服役中とのことです。
ただ、残念ながら犯行の明確な動機はいまだに不明となっていて、この部分に関してはどうしても釈然としない気持ちになりますね。
カジンスキーの過去を知ると、この人だけで1本映画作れるんじゃないか?というくらい濃厚で悲劇的な人生を歩んでいる。
ラストシーンが物語るものとは?
ラストシーンでフィッツジェラルドは信号で止まった車の中からじっと赤信号を見つめています。
フィッツジェラルドはユナボマーとの会話の際に「現代社会での息苦しさ、社会に制御されている」と言ったことを語っていました。その時にも赤信号の場面が出てきました。
結局のところ犯人であるユナボマーは捕まえて有罪も確定したけれど、そんな彼に多少なりとも近しい感情、彼の主張に賛同する部分を持っていたということでしょう。
テクノロジーは社会を不安定にし、人生を満たされないものにしているだけでなく、〔人類に〕精神的苦痛を蔓延させた原因でもある。
これは1995年に新聞に掲載されたユナボマーの書いた主張『産業社会とその未来』の要約の一部。要はテクノロジーの進化は人に苦痛を与え負の側面が大きい、そのようなテクノロジーの進化に頼ることをやめて野生に戻るべきだというもの。
簡単に言えば科学が進歩して便利になったけれど実際は生きずらい世の中になってしまうよね、ということですね。
例えばスマートフォンが当たり前となった現代においていつでも連絡を取れるのは便利ではあるが、それは時に息苦しさを覚える、苦痛を感じさせるということがあるのと同じでしょう。
自らの主張を貫き通して捕まったユナボマー、逮捕したが最後まで彼の主張が頭から離れないフィッツジェラルドの奇妙ともいえる関係性もこのドラマの面白さなのでしょう。
個人的には、フィッツジェラルドがもしかしたら第2にユナ・ボマーになるのではという恐怖さえ覚える重いラストシーンでした。
マンハントは間違いなく観るべきドラマ
マンハントは非常に面白く観るべきドラマといえるでしょう。
8話という短いシリーズの間に濃厚なストーリーが詰まっているので、普段は海外ドラマを敬遠している人にも是非見ていただきたいです。
実話をもとにしたドラマということで、当然この連続爆弾事件も実際に起こったものであり、犯人のカジンスキーも実在しています。こうした実際に起こったという事実はドラマをよりリアルなものに感じさせ、観る人を夢中にすることでしょう。
プロファイリングという特殊な操作方法とフィッツジェラルドの葛藤などにも注目して観ていただければと思います。